【解説】米国「GENIUS法」まとめ|ステーブルコイン規制の新基準と日本への影響
- Oshima
- 6月18日
- 読了時間: 3分

本日、米国で新たに提案された暗号資産関連法案「GENIUS法(Generating Enhanced National Income through Uniform Stablecoins Act)」が、アメリカ上院で可決されました。世界の暗号資産業界にとっては大きなニュースです。
この法案は、ステーブルコイン発行の明確なルールを定めた初の包括的枠組みであり、金融グレードの安全性と規制準拠を両立することを目的としています。
本記事では、GENIUS法の要点を解説しつつ、日本のDeFi事業者や政策立案者にとっての影響についても考察します。
✅ GENIUS法の主なポイント
1.ステーブルコイン発行者の条件
発行可能な主体は以下に限定されます:
保険付き預金機関またはその子会社
連邦認可の発行体
州認可の発行体(ただし連邦基準に近似)
2.発行者の資格
十分な準備金の能力
重罪歴の確認
役員の適性(誠実性・経験)
3.準備金と裏付け
米ドル現金、FRB預金、米国債などで1対1裏付け
リハイポセーション(再担保)の禁止
4.償還義務と開示
償還は「タイムリー」に行う
毎月の監査済レポート+年1回の独立監査
誤認表現(FDIC保険・法定通貨としての主張)は禁止
5.州と連邦の関係(Pre-emption)
OCCライセンスで州のMTL(送金業ライセンス)を免除
州ライセンス保有者にも全国パスポート制を認可
6.カストディの要件
FDICやOCC監督下の機関による保管が必須(準備金+秘密鍵)
7.AML / BSA対応
凍結命令への応答義務
財務省による外国トークンのブロック権限
8.違反への罰則
未認可発行には最大1日100万ドルの罰金+懲役5年
日本のDeFi環境への影響
1. ステーブルコイン規制の国際基準化が進む
GENIUS法は、米国版のステーブルコイン規制スタンダードとして機能する見込みであり、IMFやFATFの動向と合わせて、他国に対する事実上の指針となります。一方では、日本のステーブルコイン規制を参考にしている部分が多くみられる点では、日本が先行していると考えることも出来ます。
日本では、以下が変更になっていくでしょう。
日本円建てステーブルコイン(JPYC等)の発行体ルールの整備、修正
国際的な“互換性”の確保
2. DeFiプロジェクトのライセンス戦略が変わる
今後、米国市場にアクセスするステーブルコイン関連のDeFiプロジェクト、ステーブルコイン発行プロジェクトは、GENIUS法のライセンス基準をクリアする必要が出てきます。例えば:
発行者の信頼性+カストディ構造の見直しが必要
グローバル展開を見据えるプロジェクトは、米連邦 or 州の規制に準拠するエンティティ設立も視野に入る
3. 日本の政策整備にも波及する可能性
現在、日本の金融庁はステーブルコインを「資金移動業規制」や「電子決済手段」として位置づけていますが、GENIUS法のように明確なカテゴリー化+
罰則規定付きの法律化はまだ進んでいません。
BCCC(ブロックチェーン推進協会)や有識者による提言が進められている中で、本法案は日本の法制度設計にとっても強い参考事例となるでしょう。
✍️ 最後に|DeFiの未来は「規制対応力」が鍵に
GENIUS法は、単なる規制強化ではなく、「信頼されるステーブルコインエコシステム」を目指す第一歩です。今後は、ライセンス発行、準備金管理、グローバル対応という多層的な視点が、プロジェクトの成功可否を左右します。
日本のDeFi市場にとっても、技術だけでなく制度との親和性が重要になります。
規制と技術の「対立」ではなく、「融合」を目指す時代へ。
今後も国内外の制度動向を注視しながら、日本から世界に通用するDeFiの標準を構築していく必要があります。